Back


Next
コンチャローフスキー、ピョートル・ペトローヴィチ
KONCHALOVSKY, Peter Petrovich
1876年(スラヴャンスク)−1956年(モスクワ)
画家、舞台美術家として多くの静物画、風景画、肖像画を制作。 「ダイヤのシャック」(1911年)の創立メンバーで、「芸術世界」にも所属。 モスクワに住み、滞仏を繰り返した。

26
サモワールのある静物
Still-life with Samovar
1917年
油彩・カンヴァス 121×109cm
1929年、国立トレチャコフ美術館(モスクワ)より入手 ZhB-1191

コンチャローフスキーが初めて話題にのぼったのは、1910年代に物議をかもした「ダイヤのジャック」派の展覧会と公開討論会が行なわれた時のことであった。 観衆は、彼の若さゆえの攻撃性に満ちたプリミティヴィズム風の肖像画や静物画を自分たちに対する侮蔑と受けとめた。 後に、ラリオーノフが無対象表現に転換して、光線主義の理論を提唱した年に、写実を好んだコンチャローフスキーは、「ダイヤのジャック」派の仲間と同じく、フランス絵画の巨匠セザンヌの技法を採り入れて、いわゆる、セザンヌ主義へと発展していき、モスクワの伝統的絵画のプリズムを通して創作していくことになる。
《サモワールのある静物》は、1910年代末におけるコンチャローフスキーの画風形成の次なる段階の技法の特色を示すものである。 従来と同じく、コンチャローフスキーは静物画にこだわり、この一挙に解放された感のあるジャンルが十分に観衆の注目に値するものであることを証明した。 この絵では、喫茶のテーマに関わる対象を対置させている。 象牙の把手のついた堂々とした、凝った形の銅製のサモワールときらきら光るガラス、脇に明るいバラの模様が入ったコバルト色の陶磁器と素朴な木製テーブル、模様入りの灰黒色のお盆と重々しい陶製の花瓶−フォルム、質感、素材においてコントラストを成すこれらの対象は、ある時には調和し合い、ある時には緊張し合いながら向き合っている。
描出された「生命のないモデル」は、あたかも画家の気分を反映するかのように、躍動感と生の脈動に満ち、変幻自在であり、一風変わった芝居を見せられているかのような印象を与える。 対象物を迂回したり、接近したり、遠ざかったりするときに観察される対象の投影像をカンヴァス上で重ね合わせることによって、画家は対象のフォルムを「破壊」する。 テーブルやお盆の平滑面は湾曲し、毛羽立つ。 絵は確かに平面であるのに、曲面のヴォリュームが浮き出してくる。 茶器は平面的であると同時に、丸みを帯びてもいる。 ガラスのカット面で光が砕け散り、反射光や投影像はサモワールの巨大なボディの物質感を喪失させる。 あたかも座標系が混乱してしまったかのように、壁、床やドアが揺れている。
かつては緻密で、やや重々しい感じのあったコンチャローフスキーの「セザンヌ主義」的な画風が1917年頃になるとやや軽くなり、スケッチ風になってきた。 今回展示される作品では、フォルムを変形させ、交錯させ、それによって形象の躍動感を際立たせ、それにドラマティックなトーンを伝えようとする手法が採られているが、これは立体派からの影響と見られ、おかげでコンチャローフスキーの画風がさらに豊かになっている。                 (V.F.K.)
Cat.no.26 サモワールのある静物 1917年


||Top Page|Foreword|Plates menu|Biograph|Catalog Shop|msi-mall||